映画「バーバー」(コーエン兄弟、2001) 感想

映画「バーバー」(コーエン兄弟、2001)を見ました。


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予告:https://youtu.be/htxvLcSnOU0

"退屈な日々を送る理髪師に転機が訪れる。彼が思いついたちょっとした恐喝は、悪夢のような日々の始まりだった。"

 

コーエン兄弟といえば、小さな悪巧みが凶悪事件に発展していく「ファーゴ」など、皮肉の効いたブラックジョークや登場人物が話す寓話的な例え話がなんとなくクール、っていうイメージの監督です。ただ僕は理解力が低すぎて、見ても「あ~あ~、いわんこっちゃない~」位の感想しか抱けないので特別好きな監督ではありませんでした。

今回の鑑賞の目当ては別のところにありまして、

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渋いオジンだ。

撮影監督のロジャー・ディーキンスという方です。過去13回もアカデミー賞撮影賞にノミネートされるも一度も受賞したことがなく、ついた渾名が「無冠の帝王」。めちゃめちゃカッコいいですね。

しかし去年、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と組んだ「ブレードランナー2049」で念願の初受賞が叶いました。


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や、

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など、光源を被写体のバックに置いたショットの構成が非常に美しいです。

 

さて、前置きが長くなってしまいましたが、「バーバー」も映像がめちゃめちゃクールでした。

 

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モノクロかつシルエットショットを多用することによって、画の抽象性が物凄く高くなってる気がしますね。

劇中、理髪師である主人公をありとあらゆる不幸が襲います。しかし、彼は決して感情を表に出しません。怒りもせず、泣きもせず、笑いもせず、それまでと同じように訪れる客の髪を切るのです。その徹底した無感情っぷりがディーキンスによる抽象的な、いわば感情を排した画作りと物凄くマッチしていました。

これまで見たコーエン兄弟の作品は、登場人物が皆情緒豊かで、「どれだけ必死に騒いでも現実はああ無情」からくるブラックな笑いを楽しむ物語だったのですが、「バーバー」は全くの逆でした。「現実は奇妙にも転々とするが、主人公は抵抗する術を知らずただ無情に流されて行く。」

ネタバレをしたくないので結末や話の流れに関するコメントは避けますが、「最近イライラしてるけど、人と喧嘩する元気もないぜ」って人にオススメします。結局現実って皮肉に動くものだから、受け入れるのが一番賢いかもね、という教訓を得ました。正しいかはわからんけど。

観賞後は諦めと解放の狭間の感覚に襲われました。面白かったです。